ラーションは僧侶か、それとも貪欲な男か?

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ラーションは僧侶か、それとも貪欲な男か?

2006年05月27日

「よいサッカーが勝利を保障してくれるわけじゃない。質の高さだけでなく、さらに、ハードワークが必要だ。その数メートル先の努力が、成功につながるんだ」
ラーションのホームページ (http://www.henriklarsson.com/) より

ヨーロッパのチャンピオンズリーグはバルセロナが優勝した。ゴールキーパーのレーマンが退場し、10人になったアーセナルはベタベタに守るしかなかったから、ゲームそのものは決して楽しいものではなかった。

その中で、光り輝いたのはラーションだった。バルセロナ監督のライカールトも、試合後のコメントで、ラーションを褒めちぎっていた。なにしろ、決勝という大舞台の2得点は間違いなくラーションによって作られたものだからだ。

そのラーションが来期はバルセロナにいない。ライカールトは、ラーションに残って欲しいと懇願したが、ラーションはとうとう首を縦に振らなかった。故郷のスウェーデンに戻って古巣のクラブに復帰するという。

確かに30代も半ばになったとはいえ、バルセロナから引き止められて、それを断るサッカー選手がいるだろうか?
実は、ラーション、スウェーデン代表も、何度か拒否した不思議な経歴を持つ。
アメリカのワールドカップでスウェーデンを3位に導いた癖に、過去に二度ほどスウェーデン代表を拒否している。一度は息子のジョーダン君の「パパはなんで代表に出ないの?」という声に後押しされ、二度目は国民の声に後押しされて、代表ユニフォームを着ているが、彼の本心は誰にもわからない。

不思議な男だ。
僕は思わず遠い目をしてしまう。髪の毛がない、お坊さんのような外見(昔は派手な髪型だったけどね)もあいまって、ラーションは煩悩への執着が無い、無欲な僧侶のような人物なのではないか、と思ってしまった。

チャンピオンズリーグの決勝でも、ラーションは途中出場だった。試合前には、たとえベンチにいてもチームを支える、とそうコメントしていた。
でも、そんな僧侶のような清いコメントはすぐに変わってしまう。キャンベルのゴールが決まると、ラーションは早く自分を出してくれ、といてもたってもいられなくなる。チームを救うために、オレがゴールを取ってやる、とベンチでずっとそう思っていたと、自分のホームページに告白している。

後半15分にラーションが交代出場。バルセロナの最初のゴールは、ラーションが角度をまったく変えずにワンタッチでエトーに絶妙のパスを送る。スピードを落とさずに走りこんだエトーがキーパーのニアにゴールを決める(ビデオを何度も見たが、ほんのちょっぴりオフサイドに見える)。

ラーションはこのゴールを演出したときも喜ぶ暇なく、「早く次のゴールを取らなければ」と、ゴールに飢えていた。そして数分の後、彼は二つ目のゴールを演出する。右サイドに出されたボールをぎりぎりで足を伸ばして止めると、綺麗にパスをゴール前のベレッチに通した。

そして優勝。
実はラーション、一度ヨーロッパ王者の夢を、目の前で失っている。バルセロナに移籍する前、中村俊輔が活躍するセルティックにラーションはいた。ラーションはその時代、UEFAカップの決勝で負けている。

でも、今回のチャンピオンズリーグ優勝で、その悔しさを消すことができたんじゃないの、ラーション君?
「まさか。そんわけはないよ。あの悔しさは今でも忘れない。確かにチャンピオンズリーグで優勝したのは幸せだけど、UEFAカップの悔しさが消えるなんてことはない。UEFAカップを見るたび、悔しさがぶり返す。それはずっと消えないよ」

こうやってラーションの言葉を集めてみると、彼は結構負けず嫌いで強欲だ。強欲といっても、勝利に対してだけどね。そうでなければ、スウェーデン最高の選手と称えられる結果は残していないだろう。

「僕らはシーズンを通してよいサッカーをした。でも、よいサッカーが勝利を保障してくれるわけじゃない。質の高さだけでなく、さらに、ハードワークが必要なんだ。その数メートル先の努力が成功につながるんだ」

We've been playing good football all season but playing good football doesn't guarantee you will win anything. We do have a lot of quality but we work hard as well. You have to make those extra metres if you want to be successful and we do that.

ラーションは、最後の一歩までゴールを求めてハードワークを繰り返す。勝利への執念は人一倍強い。でも、一方でバルセロナにも代表にも執着心がない。

ドイツワールドカップ、これが代表としてのラーションの見納めになる(だろう)。
強欲だけど、執着しない。お坊さんのように見えて、いつまでも昔の負けを根に持っている。
不思議な男の活躍を、しっかり拝んでおきたい。

[投稿者: nori : 2006年05月27日 23:15]

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