大学サッカーを見る 年を経てサッカーへの愛が深まる

サッカーは好きですね。河原でやっているサッカーとか、そんな何でもないサッカーでもじっと見ちゃいますね。
大杉漣の言葉 高原関連のWOWOWの番組で語っていたひと言(記憶に頼っているので正確ではありません)

僕は今年、慶應大学のサッカーを、3試合見ることになった。
2試合は西が丘サッカー場のゲームで、早慶戦と筑波大学戦。これは関東大学リーグと言うメインのリーグ戦のゲームだ。もう一つは、国立で行われた早慶戦で、これは両大学の伝統の交流試合だ。 僕は慶應大学の出身者ではない。それでも、慶應大学のサッカーを見にいくのは、単純にそのサッカーが素晴らしいと思うからだ。ライターの後藤健生さんが、「アーセナルのよう」だと評していたが、少しも大げさではない。

「テクニックを生かしたパス・サッカー」という意味でも、慶応大学の試合を見ているとアーセナルを思い出す(「レベル」という意味では、もちろん比べることすらおこがましいのではあるが……)。
JSPORTS 後藤健生コラム 2009年4月25日「アーセナルのような」パスサッカーが魅力の慶應

速い展開のパスが基本となるサッカーで、ワンタッチやダイレクトのパスで、選手がよく動き、サイドを効果的に使っている。真ん中には足元のしっかりとした選手がそろい、長く正確なパスを出す一方で、スピードのあるパスをぴたりと足元で止めてみせる。
守備の面でも、相手チームへのプレスが、90分途切れることなく続く。ゲーム終盤でも守備のために、長い距離を全速力で走る選手の姿は、胸を打つ。
アーセナルのサッカーは素晴らしい。そうとわかっていても、それを実現するのはとても難しいはずだ。おそらく、それを目指して、グダグダになってしまっているチームは、たくさんある。
レベルの差こそあれ、スタイルとして、そんなサッカーを実現した慶應大学 イ・ウヨン監督の手腕は見事だ。かなり理論的な指導をしているのだろうと想像する。
ただ、サッカーの質が上がっても、大学サッカーの観客は満員にはならない。早慶戦はラグビーや野球はニュースになるが、サッカーの観客席はガラガラだ。
伝統のライバル、シーズンの終盤、4強に入る(インカレに進む条件)重要な一戦、休みで天気のよい日、とこれだけのよい諸条件が揃っても、がっかりするほど、いつもの西が丘サッカー場らしい埋まり具合だった。
(慶応大学の最終順位は5位。インカレは逃したが昇格初年度としては立派な成績だ)
ゆるい客席の風景の一方で、観客は熱く濃い。僕の後ろの席には、慶應ソッカー部(本当にこんな名前)OBの若い社会人がいて、「おれたちのころに比べると格段にレベルが上がったぞ」と喜び、「早稲田に最近勝っているのは決してまぐれではない」ことを誇らしく語っていた。
反対側には、初老の夫婦らしき会話も聞こえる。知り合いの選手がいるらしく、選手をあだ名で呼び、「慶應」関係者らしい(?)落ち着いた会話を交わしていた。ただ、審判が慶應に不利な判定をくだすと、激しく毒づいていた。
西が丘サッカー場では、観客とプレイの距離感がとても近い。ボールや人のぶつかりあう音が聞こえ、ベンチのそばで交代にそなえてアップしている選手と、観客席は軽く挨拶を交わしあったりしている。
僕は、三ツ沢球技場(ニッパツ三ツ沢球技場)と西が丘サッカー場で見るサッカーがとても好きだ。この2つのスタジアムでよさげな試合があるとどんなに忙しくても、行きたくなる。
最近はどうも「チームよりも、スタジアムの方が好き」なのか? と自分自身を疑いはじめている。
サッカーは、観客とプレイの距離感が大事で、両者の濃い部分がフィールド上で影響しあうと、サッカーのレベル関係なしによい「サッカー経験」が堪能できる。
そういう意味では、巨大スタジアムで見るサッカー以上に好きなのは、学校の校庭で見るサッカーや、Jビレッジの芝生で見るユースのサッカーだったりする。
観客の熱さと、子供たちの真剣さが、ぐいぐいと見るものを引き込んでいく。サッカー経験としては、極上の域に達する。
その日も、早慶の素晴らしい攻防(1-0で慶應の勝利)を見た後に、ふと帰り道の学校の校庭で行われている子供たちのサッカーに足をとめてしまった。
小学校の6年生ぐらいの試合だろうが、観客席の親たちも一緒になって、熱気のある試合を展開していた。一人の選手がドリブルで持ち込み、二人を交わしたが、ペナルティエリア直前でボールを失い、がっくりと肩を落としている。もちろん、彼には落ち込んでいる暇はなく、すぐに奪われたボールの行方を追って走りはじめる。
冒頭に紹介した言葉は、強烈な印象が残った俳優の大杉漣の言葉だ。もう5-6年前に耳にした言葉だが、そのときは「ああ、この人、そんなにサッカーが好きなのか」と感心し、自分のようなにわかサッカーファンには、到底知りえない領域に、大杉漣はいるのだな、と、自分には、すごく遠い言葉として聞いていた。
それが今、こうして大学サッカーに足を運び、帰り道の校庭の少年サッカーに足を止めている。
おそらく、サッカーのレベルは、遠く日本代表や世界のレベルにはおよびもしないのだろう。しかし、至近距離で見れる攻防は、チームのネームバリューとは関係なしに面白い。
ふと気がつけば、今なら大杉漣の言葉をそのまま僕が口にしても、不思議ではない。最近の日本代表の試合に、恋愛終盤期のような複雑な感情を持つ一方で、サッカー自体への思いは深まるばかりだ。


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