反町監督 それがクリエイティビティーの問題

公園でやったのはいつも中盤のディフェンスだったね。68mのラインを作って(中略)それがクリエイティビティーの問題2006年1月14日 エルゴラッソ スペシャルインタビュー 反町康治

このコラムを読んでいるあなたは何歳だろうか?もし、30代であるなら、少しだけ真剣に最後まで読んでもいいかもしれない。
あなたに伝えたい結論はこうだ。もし、あなたの仕事場で与えられている環境が不十分なもので、自分で何でもやらないとはじまらないとしたら、そのことはとても素敵なことかもしれない。そういうことだ。
なんだか、占いのようなはじまりになったが、オリンピック代表を率いることになった反町監督のインタビューを読み返しているうちにそんなことを考えた。
少し前、その反町監督が率いるU-21日本代表のはじめての公式戦、中国対日本が行われ、2対0という結果で日本は勝利を飾った(2006年8月7日 得点者、本田=名古屋、増田=鹿島)。
まずは一安心というところだろうが、ゲームを見ていた僕にとっては、逆の結果に見えた。つまり、実際の点差とは違い、中国が3対0で勝っていても、おかしくはなかった、ということだ。
それだけ、一人一人の選手の質は、中国代表の方が明らかに日本を上回っていた。
この試合を、選手の質とは異なる結果に導いた(運以外の)原因があるとすれば、それは何だったろうか?
一つは日本のゴールキーパーがすばらしかったこと。西川周作(大分)は何本も日本の決定的なピンチを防いでいた。このチームは最高のゴールキーパーを手にしている。オーバーエイジなんか糞食らえだ。
そして、もうひとつ決定的な差、それは両チームの監督だ。
日本は前半と後半で明らかに違う戦い方をしていた。ハーフタイムに監督から具体的な指示があり、それが効果的な結果に結びついていた。前半と同じように、日本が押しこまれる展開に見えたそのとき、ふとしたスキをついて、日本は数少ないチャンスを、決定的なものに変えていた。
初戦だけで判断するのは早計だが、この監督とチームには、予測し得ない状況の中で、何とか解決策を見つけ出す、クリエイティブな力があるように見えた。
クリエイティブであること。
サッカーに限らず、これからの日本の若い力にとって、それはとても大切なキーワードだ。新しい時代には、常に新しい解決策が要求される。これから、あなたの目の前に用意される課題の多くは、どんなに小さなものでも、おそらく世界の誰も経験したことのない種類のものに違いない。
U-21の選手たちがそうであるように、クリエイティブに勝ち抜いていかなければいけないだろう。
クリエイティブ。その力を養うために、何が一番必要だろうか?
まだJ2だった新潟の監督を、反町監督がまかされたとき、反町監督自身もその事実に驚いていた。何でオレに?
36歳の監督経験のまったくない若い男に、一つのチームの運命をまかせるなんて、常軌を逸している。
選手もスタッフも施設も含め、最高の環境が与えられているわけではなかった。雪が多いために、開幕戦がホームでまともにできなかった。練習場も確保されていない。
サッカーコート一面が確保されない公園を練習場にしていた。サッカーの教則本を読めば、必ずフィールドやゴールの大きさが書いてあるが、それがない。ある意味で、小学校のサッカーチーム以下の環境だ。
冗談のような話だが、J1昇格を決めたゲームの前日も、反町監督と新潟の選手たちは、公園で練習をしていた、という。

公園でやったのはいつも中盤のディフェンスだったね。68mのラインを作って「ここを中盤だと思ってやってくれ」と。選手も前向きにやってくれていたし、面白かったよ。それがクリエイティビティーの問題。しかも雑草が生えているから、抜くんだよ。それをやって、とりあえず35mx68mのグリッドだけは作ろうとね。ボコボコのところに土を入れたりもしたし、もちろんシャワーもない。近くの健康ランドで浴びていた。

それでも、目標だけは目の前にある。何とか結果を出さなければいけない。
そのとき、人は真剣に考える。答えが見つからなくても、まだ真剣に考える。もういやだ、と思っても答えを見つけようとする。普段使っていなかった脳細胞の細い血管に、血液を送りこむように考える。
そうすると、そこには、必ず解決策が見つかり、クリエイティブな力はそのとき、あなたの手に宿る。
もし、あなたがアルビレックス新潟のように、新しく小さなチームにいて、誰も助けてくれない状況にいたら。そのこを呪うと同時に、感謝もしないといけない。
あなたの脳細胞は、その不遇なマイナスの状況の分だけ、プラスに活性化されていくはずだ。
インターネットの世界を生きていると、素敵な人々にいっぱい出会う。その人は、たいてい、会社ではあまり評価されていなかったり、自分の不遇な状況をのろっていたりするのだが、私から見れば、それでも、その人が手にしているものはとても素敵なものに見える。
手ごろなサイズで、新しくて、いろいろチャレンジができて、失敗する確率が高そうなこと。インターネットのビジネスでは、そういうことがとても多い。
でも、そこに身を投じて、小さくても成功をつかんだ人は、知らぬ間に力をつけている。
反町監督は、オリンピック代表という新しい小さなチームを手にした。目の前には、新しいことばかりが、次々に訪れる。それでも彼なら、クリエイティブに乗り切っていくことだろう。もちろん、オシムという最高にクリエイティブな熊おじさんも助けてくれる。
でも、何よりもプロスポーツ不毛の地で、新潟を昇格させたという二度とできない経験が、染み付いている。
あなたの目の前の状況が、反町監督のような展開なら、ちょっとだけうれしくなって解決策を探すために頭を回転させてもいいだろう。
辛いけれど楽しい。楽しいけれど辛い。

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コメント

  1. kamakura16 より:

    オシム監督が「ユーゴでは、クリエイティブでなければ、生き延びることができなかった」といった主旨の発言をしていたと思います。
    まさに、そうだと思います。
    それは、私たち誰にでも言えること。クリエイティブでなければ生きていけないのです。
    かすかな、希望の光を見ながら、見えなければ、見えるまで、見えはじめたら、希望が目標になるまで、目標になったら、それを実現するため、クリエイティブに生きて、行動するしかないのですね。

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