播戸竜二が噛み締めている言葉

自分で限界を決めないで欲しい。俺も25歳まで海のものとも山のものともいえない存在だった。でもそこから飛躍してここまできた。お前にもそれができるパトリック・エムボマが播戸にかけた言葉 播戸公式サイト 2005年5月16日の記事より

なぜオシムは、播戸を呼ばないのか。それが、最近の家族会議で持ち上がるテーマの一つである。
「日本代表は相変わらずの決定力不足で悩んでいます」と言うニュースが流れるたびに、「だから、播戸じゃん」と安易に突っ込むのだ。
そうやって突っ込みを重ねている間にも、播戸は10試合で10得点と波にのってきて、得点ランキングにも名前が出てきた。
それ見たことか、と思うわけだ。
播戸竜二には、どこか応援したくなる雰囲気がある。
巻やゴン、中澤なんかに共通する感じだろう。サムライの雰囲気を漂わせて、決して技巧的ではなく、「飛び込む」とか「突っ込む」とか、そんな感じでプレイをする。
播戸は速い。彼がゴールを狙ったときに、走りこむイメージは、もう突風のようである。
そして、巻、中澤とかが典型なように、若いころにさしたる実績が無い。
高校までは、まったくの無名で、トレセンにひっかかっていたとか、代表に選ばれていたとかはなく、高校3年でようやく国体の代表に選ばれる。
そこでの活躍が目に留まり、ガンバ大阪に入るわけだが、最初は練習生という扱いだ。しかも、「公式試合に2試合以上呼ばれなかったらクビだからね」というシンデレラのママハハ並みの意地悪な条件つきである。(家の片付けを全部終えないと、舞踏会にはつれていかないからね)。
しかし、播戸は魔法使いの手を借りずに、その意地悪な条件を見事にクリアし、その後も出場機会があれば、得点を重ねていく。
それでも「定着」とか「レギュラー」というキーワードとは無縁である。レンタル移籍で札幌に行き、その後はまたレンタル移籍で神戸に移る。その後、神戸が完全移籍で獲得するのだが、日本代表には声がかかりそうで、かからない、という線上をいつもうろうろしている。
結局、またガンバが播戸を獲得し直すことになる。ぐるっと回って、最初に戻ったわけだが、播戸竜二ももう26歳になっていた。
25歳までは、毎年ママハハに意地悪な条件を提示され続けているように、選手生活を重ね、そして26歳になって、ようやくストライカーとして確固たる雰囲気が出始めてきた。自分の名前がメディアに露出しはじめた最近になって、播戸はふとある言葉をかみ締めているだろう、と僕は勝手に想像する。

「お前にはこれからいろんな可能性がある。自分で限界を決めないで欲しい。俺も25歳まで海のものとも山のものともいえない存在だった。でもそこから飛躍してここまできた。お前にもそれができる」

そう声をかけたのは、パトリック・エムボマという選手である。
カメルーン代表で、アフリカ大陸のMVPにもなり、国際Aマッチで56試合出場32得点という輝かしい成績を残している。97年、おそらくエムボマの絶頂期に、日本のガンバ大阪にやってきて、まるでサバンナの草原で躍動しているようなプレイを見せて、日本中に鮮烈な印象を残した。
しかし、エムボマの経歴をよく見るとその輝きは、人生と言う尺度の中ではほんの一瞬だということがわかってくる。
97年や2000年の彼のピークのシーズンをのぞけば、ゴールも少なく、怪我に悩まされている時代も多かった。
その選手の栄光だけを知る僕らは、その選手がずっと輝いてきたように錯覚しがちだが、決してそうではない。もともと、ストライカーという職業は、周りからパスをもらってナンボというポジションで、ずっとコンスタントに活躍することが難しい。ディフェンスに厳しくマークされることも多く、ファールを受ける確率も高い。怪我をしやすいポジションでもある。
エムボマの輝きは一瞬だが、しかし永遠に記憶に残る。
2005年の5月にエムボマは、日本のヴィッセル神戸で引退を迎える。
その引退セレモニーで、播戸がエムボマに花束を渡す。播戸は結局、その日、エムボマの引退が悲しくて、泣きっぱなしである。

本当にパトリックにはいろんなことを教えてもらった。サッカーのことも、人間としても・・・。ここで書いてたら何時間も書いてしまうぐらい・・・
そんなパトリックが今日で引退してしまう・・・。
午後のミーティングでパトリックがみんなに挨拶した。ホンマにいい顔してた。
でも俺は話を聞きながらずっと泣いてた・・・。
って書きながらもずっと泣いてる・・・。
練習が始まっっても涙がとまらなかった・・・。パトリックと今まで一緒にやったこと、
教えてもらったこと、肌で感じたこと・・・。そのことを考えてたら自然と涙が出てきた・・・。
練習が始まってたからとめようと思ってるのに、とまらなかった・・。

播戸は躍動する。
そういうめぐり合わせのシーズンを彼は迎えている。
播戸は、ギリギリの線上をいつも残ってきた強さが備わっている。一瞬も気を抜くことはなうだろう。
怪我に悩まされずに、ずっと輝いていてほしい、と僕はそう願う。
そして、永遠に僕たちの記憶に残るゴールを決めてほしい。

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コメント

  1. kamakura16 より:

    確かに、彼は一瞬の気を抜くことも無いだろう。で、あれば、オシムは必ず呼ぶはずだ。僕も、一瞬の気を抜いてはならない。サッカーやサッカー関係者から教わることは多い。

  2. kamakura16 より:

    ほら、播戸、呼ばれました。
    当然のように活躍すると思います。ガーナ戦。

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