西部謙司さんの本と日本のサッカーを考える

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日本は自分たちの登頂ルートを見出しかけている。どんな道だって最後は厳しいに決まっている。また、そこが一番面白いのではないだろうか。アジアカップ2007戦記「日本を越える日本サッカーへ」西部謙司

長年つきあってきた重い肩こりが、整骨院ですっかり綺麗に治るという経験をした。
医者はどこも触らずに「ああ、背骨だね」と断言して、ずっとつきあってきた猫背をまっすぐに伸ばした。
驚いたことに、それ以来、まったく肩のコリも首のコリも、きれいに消えてしまった。
「そうか背骨か、、、そういうことだったのか」
その肩こりが治った時期に、僕は西部謙司さんのサッカーの本「日本を越える日本サッカーへ」という文章を読んでいた。
なんだか無理やりなたとえだが、西部さんの文章を読んでいて、もやもやとして、肩こりの多い最近のサッカーの世界が、すっきりとする感じを覚えた。
サッカーは皆が同じものを見ているのに、人によって「見立て」がちがう。
ゲームは流動的で、野球のように場面場面を切り取って語ったり、過去の個人記録から分析予測することが難しい。とらえどころがないからだ。
だから小説でも映画でも、サッカーの本質をわかりやすく語ったものに出会う経験は稀だ。
ところが、西部さんの文章というのは、そのとらえどころのないサッカーを、見事にその場にピンで止めて見せてくれる。いつも感服する。
たとえば、ドイツワールドカップ、日本対オーストラリアの、小野への交代の場面だ。多くの意見は、「あそこで小野をいれるなんてジーコはどうしようもない」という感じだった。

オーストラリアの強みは、もともと敵味方のゴール前にある。逆に、日本の強みは中盤にあった。1点をリードしていた日本は、主要プレーエリアを中盤に持っていくべきだった。(中略)そうした状況の中、小野投入にボールキープ以外の意図はありえない。これはジーコの説明を待つまでもないことだ。(中略)ジーコの失敗を指摘するなら、「選手はわかっている」と思い込んだことだろう。

ここだけを取り出しても、かえって議論を呼びそうだが、とにかく僕は、小野投入についてずっと消えなかった肩こりが、この書籍を読んで消えていくのを感じた。
「サッカーがわかる」そういう文章に出会うのは驚きだ。
その西部さんの書籍は、日本が4位で終わったアジアカップを書いている。そのアジアカップで残っていた僕の肩こりはこんな感じだった。
いいサッカーをしていた。けれど勝てなかった。パスがいっぱいで、シュートが少しだった。暑かった中ではよくやったのかな。でも10人でボロボロの韓国にも勝てない。
本当にこれは正しい方向かな? 第一気持ちがぜんぜん伝わってこないよ。このままじゃ、ワールドカップどころか、アジアを勝ち抜くのだって難しいんじゃないかな?
オシムは何を考えているのだろう?
西部さんは、アジアカップのサッカーに「絶望に近い失望感」を感じたと書いている。イラクが優勝して、カップを掲げたときに、イラクチームの勝利に対する感動と一緒に、その失望感が決定的になった。

闘将ユニス・マフムードがカップを掲げた瞬間、本当に日本は負けたのだと思った。今回は完全にやられたと。失望感が大きかった。絶望に近い

日本代表のサッカーの日本化は進んだ。ベースはある程度できた。
しかし、それなのに失望感、閉塞感が強い。それは「日本化が進んだ結果、日本サッカーの欠点がかえって浮き彫りになり、長所に限界があることをはっきり知らされたからだ」という。
しかし、失望の最後に西部さんが希望を書く。この本の最後はこう締めくくられている。

けれども、実際には絶望などしていない。状況は絶望的かもしれないが「何だそれだけじゃないか」とも思っている。世界との「僅差」を甘く見てはいけないが、乗り越えていけばいいだけの話。日本は自分たちの登頂ルートを見出しかけている。どんな道だって最後は厳しいに決まっている。また、そこが一番面白いのではないだろうか

西部さんは、このアジアカップの「日本化」は、スタートラインだ、という。確かにそうだ、と本を読んでそう思った。
しかし、書籍を閉じた後、同時にこうも思った。ここからは本を読んだ僕の勝手な解釈だ。
創り上げた「ベース」を保つことはそれほど簡単じゃない。
壊すより、創ることが難しいとかつてオシムは言った。しかし、創るよりも、それを継続することはもっと難しい。
日本サッカーのベース「人もボールもよく動くサッカー」をずっと継続し、各年代にも浸透させる。オシム以降も迷わずそれを続ける。
確かにオランダやドイツなどの話を聞きかじると、その国のサッカーには、長年の間に積み上げた「ベース」を感じる。
日本はその「ベース」を作り上げつつある。ようやくスタートラインに立った。しかし、それを壊さずに継続していけるだろうか? まして、それを自分たちで乗り越えていくことができるだろうか?
その道筋は、どうやら僕の肩こりほど簡単じゃなさそうだ。
道のりは遠い。それでも、この年齢になってはじめて自分の背骨を意識したように、前に進んでいく道はかすかだが僕なりに見えた気がした。
というわけで、今日は本の紹介です。面白かったのでオススメです。

コメント

  1. suzu より:

    アジアカップの敗戦で感じた「だめだ~、こりゃ! よくわからないけど、進化が止まった気がする」という感覚。
    ひとりのサポーターとして自分の心に浮かんでいた、漠然とした不安というか、不満の正体が何なのか少しわかった気がします。

  2. サッカー アジアカップに関する情報です。

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