アラダイス 契約が大事

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「まったく残念だが、長く仕事を続けるためには、強い契約を結んでおくことがとても大事なんだ」

League Managers Association “Allardyce on Management” 2006年1月12日の記事より

イングランドのプレミアリーグに、サム・アラダイスという監督がいる。
中田が去年移籍したボルトンの監督だ。中田の見事な英語の記者会見で、彼の横にいた恐そうなおじ様がアラダイス。コワモテの刑事のような顔をしているが、父親は実際に警察官だという。
先週のコラムで取り上げたチェルシーのモウリーニョ監督と、ボルトンのサム・アラダイス、二人が手にしている環境はまったく正反対だ。
チェルシーには、アブラモビッチという巨大スポンサーがついていて、望みの選手をたとえ高額でも手に入れられる。その反対にボルトンには、十分なお金がない。いつも望みどおりの選手が手に入らないんだ、とアラダイスはインタビューでぼやいている。
しかし、そのアラダイスは、この厳しいプレミアで長く監督を続け、今はチームと、10年という長期の契約を結んでいる。これは、とてもとても長い契約だ。
英国のワーウィック・ビジネス・スクール(Warwick Business School)から英国のサッカー監督についての詳細な分析レポートが報告された。英国の監督の半分近く(49.1%) が1年で解約され、その後 監督の仕事には戻っていないという。
そんな悲惨な値と比べると、アラダイスが手にしている状況は、極めてめぐまれている。
アラダイスは言う。
「強い契約がよい仕事に導いてくれる」
強い契約があれば、短期的な目標だけでなく、長期的な見通しも考えることができる。チームも会社も短期的な判断をしないで、自分を守ってくれる。
アラダイスは昨年6連敗を経験し、やばい状況になったが、そのあと、見事に回復してUEFAカップの出場権を手にしている。
お金のためだけでなく、チームを強くし、よいサッカーをしてサポーターを喜ばせるためにも、監督の「強い契約」がとても大事だ、と彼は言う。
逆の状況では、サポーターにブーイングされたら、まず監督が解任される。監督だって、試合に負けたら、自分と家族の生活がやばいと、ネガティブなプレッシャーで正しい判断が難しくなる。
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選手としてのアラダイスは、プロになれたものの、決して有名な選手ではなかった。
ディフェンダーだった彼は、クラブを転々として、妻と子供が二人いて、銀行にまったくお金がないという日もあったという。
アラダイスは、その後、コーチとして実績を積み重ね、日本で言えばJ2のときにボルトンの監督になり、ボルトンをプレミアに昇格させている。その後、着実に成績を伸ばし、ついに6位になってヨーロッパUEFAカップの切符を手にしている。
最近は、アラダイスをイングランドの次期代表監督に、という声も聞かれる。
アラダイスは、苦労して学んだのだ。
自分が「プロフェッショナル」であれば、自分のためにもチームのためにも、仕事の前に、しっかりと立場と目標を設定し、強い契約をしっかり結んでおく必要があるのだと。そうすれば、長く幸せな仕事ができると。
えらく現実的な言葉だが、禅問答のような人生訓よりは、よっぽど役に立つかも。
サッカー界に限らず、どの世界でも、仕事はいい加減に突入していく。なあなあで、よい感じでスタートしても、最後には罪のなすりあい、というのも少なくない。
今度から、新しい仕事をする前は、アラダイスのブルドックのような顔でも思い出すことにしよう。
※このコラムは以下の3つの記事を参考にしています。
League Managers Association “Allardyce on Management” 2006年1月12日
Times Online “The Big Interview: Sam Allardyce” 2005年1月2日
Warwick Business School Report 2006年1月10日発行

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