LET’S STAY FOURTH! 「このまま4位でいようぜ!」2月25日 エバートンのホームページの見出し
イングランドのプレミアリーグを見始めた最初のころ、不思議に感じたのは、監督たちのコメントだった。特に中堅や下位の順位にいるクラブは、正直で身も蓋もない発言が多い。
シーズン前のインタビューとかでも、「優勝を目指す」ってな元気のよいコメントは、まず出てこない。
僕のように、野球とオリンピックと運動会で育っていると、スポーツするなら優勝を目指すのは当たり前で、ダメでもせめて銅メダル、という感覚が強い。
「今の順位はうちにしては上出来ですよ」なんてコメントを聞くと、びっくりしたものだ。
英国人気質なのかもしれないが、チームを鼓舞する指揮官のコメントとしては、いまいちなんじゃないか、と首をかしげつつも、根性の入っていない感じのコメントがおかしくて、密かな楽しみになっていた。
プレミアも終盤になってきた。2月にエバートンがマンチェスターシティを破った日に、「4位でいようぜ!」と威勢のよい見出しを見て、久しぶりに、プレミアリーグを最初に見たときの不思議な感じが戻ってきた。
もし、あなたがプレミアをよく知らずにこの見出しを見たら、きっと首をかしげてしまったことだろう。「だって4位でしょ?」
このところ次々に大事なゲームに勝利し、チームもいい調子なんだから、「優勝も奇跡じゃない」ぐらいのコメントがあってもよさそうだが、大真面目に「4位最高!ずっと4位がいい!」と叫んでいる。
その記事に書き込まれたファンのコメントは、ほとんど泣きそうなぐらい喜んでいた。
もちろん、プレミアリーグを好きになった今は、4位や5位の重要性をわかっている。ヨーロッパの戦いへの出場枠も少なくなった今年は、エバートンの尋常でない喜びもうなづける。
今シーズンはもしかすると4強の一角が崩れそうだし、しかも、その4位を争うのは、リバプールとエバートン、そう「マージーサイドダービー」と呼ばれる、ビートルズの故郷の因縁の戦いだ。
そこでイングランドのプレミアリーグが残り10試合になったところで、今回は柄にもなく順位予想というのをやってみた。といっても、予想するのは、1位ではない。4位だけだ。
予想をはずすことにかけては自信があるが、今回は少し精緻にエクセルなんかで表を作ってやってみた。
すごく簡単な計算だ。
まずプレミア全体を、3つのグループに分ける。
1位を争っている3つのチームは「Aクラス」で、ここにはエバートンもリバプールも負ける想定。
次にエバートンと同じく4位を争っているチーム、リバプール、ブラックバーン、ポーツマス、アストンビラ、マンチェスターシティの6つのチームは「Bクラス」。ここは実力も拮抗しているので、全部引き分けで勝ち点1を足していく。
残りのチームはCグループで、全部勝つことにする。とにかく勝ち点3を足す。
これで、単純に勝ち点を計算してみる。
結果、4位はエバートンで勝ち点73、5位にアストンビラとリバプールが並んで勝ち点71となった(本当の勝ち点はこんなにいかない。例年通りだと70以下)。
なんと4位はエバートンになっている。
もちろん、リバプールファンは激怒するだろう。
もともと4強の実力があり、チェルシーやマンUにだって勝てる底力がある。ましてやアンフィールド・ロードのサポーターの力をお前は知らないのかと。ホームの試合が全勝だっていけそうだ。そして(僕の大好きな)トーレスだって絶好調だ。リバプールが、4位を逃すなんてありえない。
しかし、エクセル表に書き出して日程を見ると、ちょっとリバプールが心配になってくる。特に3月の終わりから4月にかけて、マンU(3月23日)、エバートン(3月30日)、アーセナル(4月5日)、ブラックバーン(4月13日)という順番で来る。Aクラスの戦いと、4位争いが変わりばんこでやってくるのだ。
しかも、マンUとアーセナルの強豪対決は、二つともアウェイでの戦いになる。追い討ちをかけるように、チャンピオンズリーグの準々決勝(4月1日、9日)が絡んでくる。
一方のエバートンはこのあたりの日程が有利だ。リバプールとガチンコになる前後の相手には、Aクラスも、4位争いのチームもいない。
残り試合全体を見ても、若干エバートンに有利に見える。4月中旬以降の終盤には強豪との試合があるが、チェルシーとはホームで戦える。今の監督のまま、終盤チェルシーのモーチベーションは微妙そうだ。ホームならエバートンが勝てるかもしれない。
アストンビラとの4位争いも、ホームで迎え撃つことができる。
もし、3月末に組まれたマージーサイドダービーに、リバプールがホームで負けると、サポーターは一気にベニテス監督の解任に傾くかもしれない。
リバプールは、このゲームだけは絶対に落としたくないが、かといってマンU、アーセナル、チャンピオンズリーグと、どれも手を抜くわけにはいかない。さすがのベニテスも、体重を減らすことは確実な感じだ。
そして、プレミアには、熾烈な降格争いがある。降格を逃れたいチームは、ここからなりふり構わず本気で戦ってくる。この降格チームとの対戦は、リバプール、エバートンとも同じ数だけある。しかし、エバートンの相手には、すでに降格が決定的なダービーが入っている。リバプールの残り試合に、ダービーはいない。
こうやって見ていくと、つくづくサッカーの神様の腕前はすごい。
リバプールの方が戦力的には上だが、それを帳消しにするぐらいのストレスをリバプール側にかけている。これもひとえに、サッカーを予測不可能にして、神様自身さえ結果をよめなくして、たっぷりと楽しむ魂胆だろう。
ここまで書いて、じゃあ、4位はエバートンで決まり、とそう書こうとしたが、作ったエクセルシートの勝ち点差の結果はたったの「2」だ。
誰も結果は予想できない。
4位争いが今シーズンもっとも見ごたえのある争いだ、と月並みなコメント以外とてもいえそうにない。
いよいよたまらない感じで、プレミアリーグの終盤がやってくる。
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