プレミアリーグ 強いチームが決まっているのになぜか面白い

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そもそもが優勝、勝ち負けばかりを語る風潮にも問題があるのではないか。追っかけてわくわくさせてくれそうな対象、焦点を別に見つけるのも、メディアやファンの権利であるはず。スポーツナビ 東本貢司氏のプレミアリーグについてのコラム 2005年09月28日

プレミアリーグが8月にはじまって、ケーブルテレビで試合を見ることができる。仕事から帰ると、ライブや、録画した試合を掘り出して見ている。
プレミアの画面は美しく、そして今年も面白そうだ。
緑の芝、フィールドと観客が接近する満員のスタジアム、自然にわきあがるチャント。そして小さなプレイに、観客から自然に拍手が沸く。
シュートが枠をはずれると、例の「ドゥオーっ」とか「ウーンッ」とか、低い歓声が響く。かえってシュートが枠ギリギリではずれたほうが、観客席の映像は見ごたえがある。頭を抱えているおじさんに「その気持ちわかるぜ」とつっこみたくなる。
「こういう試合が面白いんだよな」
試合の番組表を見て、有名チームでない組み合わせを指差して、そうつぶやく。
マンチェスターユナイテッド、チェルシー、アーセナル、リバプール、いわゆるこの4強を除いたチームの組み合わせに注目する。
冒頭の東本さんの言葉は、2005年のコラムからの引用だ。

そもそもが優勝、勝ち負けばかりを語る風潮にも問題があるのではないか。追っかけてわくわくさせてくれそうな対象、焦点を別に見つけるのも、メディアやファンの権利であるはず。
たとえば、ブラックバーンやマンチェスター・シティーの戦いぶりとその動向などは、ほんと、今お薦めです!

不思議なことに、2007年の冒頭に持ってきても変わらずに、そのまま当てはまる感じで読める。
2007年の今になって僕は「そうだよな」と思う。
いわゆる4強の優勝争いも、例年通り注目だが、プレミアの楽しみの一つは中堅どころのチームのせめぎ合いにもある。
少し前の試合になるが、たとえばミドルズブラとニューキャッスルの試合には、小さなドラマがいくつもあった。その日はオーストラリア代表のフォワード、マーク・ビドゥーカが、ミドルズブラから、ニューキャッスルに移籍した。ビドゥーカはミドルズブラの得点源だったから、その移籍は波紋を呼んだ。
当然のように、ビドゥーカは、ミドルズブラのサポーターからブーイングを浴びる。
ミドルズブラのキーパーは、ワールドカップで俊輔のセンタリングを取りそこなった同じオーストラリア代表のマーク・シュウォーツァー。
ミドルズブラのセンターバックのウッドゲイトは、かつてビドゥーカがいたリーズユナイテッドに在籍していた。
アランスミスをはじめ、リーズユナイテッドの卒業生が、このゲームには何人もいる。こんなに多くの選手を生み出して、しかしそのチームは、今はプレミアには届かない場所でもがいている。
そんなわけで人間模様が微妙に絡みながら、その上、この組み合わせは同じ地域のダービーマッチということになっている。
ホームのミドルズブラは、ビドゥーカに移籍されて、負けるわけにはいかない試合、というお膳立てで、逆にビドゥーカは、ここで得点をもぎ取るのが、ニューキャッスルのサポーターに対する義務、という状況にあった。
注目のビドゥーカは、ゲーム中まったく機能していない。
「こりゃビドゥーカは交代だろうな」
そう思ったが、試合終了が気になりだしたころ、ビドゥーカは一瞬でこのゲームの主役になってしまう。
ペナルティエリアでディフェンスに囲まれながら、ボールを2・3度トラップする。うまく自分だけのエリアを作リ出して、瞬時に足を振りぬく。
じっと耐えた監督のアラダイスも大したものだが、この状況できっちりゴールをもぎ取る、ビドゥーカもすごい。
こりゃビドゥーカのドラマだな、と思った矢先、そうさせてはならじと、今度はミドルズブラが気迫で追いつく。ビドゥーカのゴールから3分後だ。結局、試合は2-2のドローに終わる。
優勝候補のチームはだいたい毎シーズン決まっている。それ以外のチームは選手層や、資金力からいっても優勝は無理。ヨーロッパの有名リーグは大抵そんな感じだ。Jリーグもそんな状況になってきているかもしれない。
サッカーを見始めた最初は、そのことが不思議だった。
強いチームがはじめから決まっていて、どうして面白いの?
今となってはそう思ったことが不思議なくらいだ。マンチェスターユナイテッドとベッカムしか知らなかった自分が、毎年、知識が深まり、どんどん味わい方が変わっていく。
今では、試合の組み合わせを見る時、4強以外のチームをじっと見ている。
今年はポーツマスにひそかに注目している。ブラックバーンもいい感じだ。ニューキャッスルは、チームが熟成するのに少し時間がかかりそうだ。そんなふうに毎週毎週、考えながらプレミアとの時間が過ぎていく。
成績や順位ではない。4強相手には、結局力負けする試合もたくさんある。
それでも、枠をはずれるシュートに頭を抱えながら、4強以外のチームが作り出す、ワクワクするような時間の流れに身をおいていたい。

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