あのシュート、あのボールに、僕のすべての心と魂をこめた。まさにここしかない、という場所にゴールは決まった。
ロスタイムにゴールを決めたイニエスタの試合後のコメント
怒られることをあえて承知で言うが、今のチェルシーは、ある意味で最高のチームだ。昨シーズン、グラント監督のもとで、チャンピオンズリーグの決勝まで進んだ時にも思ったが、このチームの選手たちの意識のレベルは半端ではない。
このチャンピオンズリーグの準決勝で見せた90分の守備の城壁は、おそらく、もうしばらく見ることのできない高いレベルのものだった。
これだけの守備網は、選手たちのとんでもなく高い意識がなければできないのではないか、とそう思った。
ランパードやエッシェンが、後半の後半で攻撃に精彩を欠いているように見えたのも、自分を犠牲にして90分間守備に徹する、そのことがいかに過酷なことかを証明しているように思える。
バラックが、ゲーム中、完全に消えていたのも、彼がバルセロナのパスコースを消すために集中した時間の濃密さをもの語っている。
その徹底した自己犠牲に見合う結果が得られなかったのだから、バラックが審判に怒りをぶつけるのも、ある意味無理からぬことかもしれない。
そして、最後のテリーの呆然とした表情。
僕は、この男のこの試合後の顔を、一生忘れることはないだろう。
この守備を支え続けたテリーは、試合が終わったあと、バルセロナのロッカールームに行って、選手たちを祝福したという。
今回もヒディンクは選手たちに簡単な指示しか与えていないのではないか?
アウェーゴールは致命傷だ。安易に飛びこむな、縦を切れ、バランスを崩さずに、常に2人以上でフォローし、パスコースを徹底的に消すんだ。
このクラスの守備で、おそらく「こういう場面になったら、こうしなさい」という問題集を解くような、お勉強的なパターン練習は、意味がないような気がする。
最高クラスの選手たちだから、簡単な指示で最高の守備が築けるし、彼らが納得ずくで自己犠牲を払えば、これだけの堅牢な城壁になるのだ。
この日のスタンフォードブリッジは、観客もボールボーイも、最高の選手たちが犠牲を積み上げていくヒディンクの戦術に、ある意味納得し、協力していたように思えてならない。
それはまったく普通ならありえないことだ。
バルセロナの監督のペップ(グアルディオラ)にしても、このクラスの選手たちが、ここまで徹底した守備を見せ続けることに、ある意味、恐ろしさのようなものを感じたことだろう。
プジョル、マルケス、アンリ(最近輝きが戻りつつある)を欠いた、10人のバルサに対して、ここまでやるとは。
試合の終盤、ペップが、ヒディンクに何かを話しかけていた。その言葉が何かを知るよしもないが(何語で話してたのかな?)、「皮肉を込めた驚きの称賛」を伝えていた、と勝手に想像している。
僕は、このゲームを通しで3回見たが、結果がわかっていても、イニエスタのゴールには、そのたびに震えた。これだけの守備が築き上げられながら、ロスタイムの最後であのゴールだ。積み重なったものがあるから、あのゴールが恐ろしい迫力を持つ。
多分、まだ何回も見返すだろうし、この先、このイニエスタのゴールとそのコースを、折にふれて思い出すことだろう。
なんだか、まるで昔話の結末を見ているようだった。
チェルシーの完璧な守備の城壁は、アブラモビッチという男の個人資産の上に築かれている。前妻に1兆3,500億円の慰謝料を支払い、バルセロナのポーカーで5000万円を失ったと報じられる(広報サイドは否定)この男の願いは、「村の正直もの」といった風合いのイニエスタによって、最後の最後で無残にも砕かれてしまった。
これだけの投資をしても、手に入らないものがあるなんて、まさか、思いもしてなかったんじゃないだろうか?
この先、どれだけお金を使えば、イニエスタのゴールが手に入るのか?
「サッカー」がとんでもないものだ、ということを、改めて思い知ったのではないだろうか?
アブラモビッチは、まだ続けるつもりだろうか?
まったく投資に見合わないとあきらめてチェルシーを売却するのか、余計にのめり込み、変わらずにヨーロッパでの勝利を追求するのか?
続けるとして、ヒディンクの次のチェルシーの監督はいったい誰にしたらいいの?
リッピ? ファーガソン(無理無理)? ベニテス? ベンゲル? それともモウリーニョにもう一回頭を下げて頼む(意外に現実的かもよ)? まさかここでゾラ…
余計なお世話だが、アブラモビッチの立場にたって考えると、悩みは深い。
他のものは手に入っても、サッカーの栄光だけは手にできないかもしれない。
でもね、アブラモビッチ君、フォーブスのお金持ちランキングがいくら下がろうとも、サッカーはきっと君の財産をかけるだけの、価値があると思うぞ。
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コメント
大内さんが仰るように最高のゲームでしたね。
> その徹底した自己犠牲に見合う結果が得られなかったのだから、バラックが審判に怒りをぶつけるのも、ある意味無理からぬことかもしれない。
同感です。
先日の「Foot!」にて、倉敷氏も似たようなコメントをされていましたが、今のチェルシーにいる超一流の選手たちは、カンプノウでも真っ向勝負できるチーム。
それが、攻撃に対する重心を著しく下げ、守備に力を注ぎ、現実的(という表現は間違いなのかもしれませんが)なサッカーに徹する。
これで選手たちにフラストレーションが溜まるのは致し方ないことなのではないでしょうか。
「俺たちは全世界から批判されようが、このサッカーで勝ち、今度こそビッグイヤーを手に入れるんだ」
こんな気持ちだったのではないでしょうか。
仰るように結果が得られれば報われたのでしょう。
しかし勝利をほぼ確実に手にしていながら、アディショナルタイムに全てを失った。
だからこそ、私も大内さんが仰るように、試合中にもかかわらずバラックがハンドの判定に、怒りを露わに抗議したこと、また試合後にドログバがあそこまで抗議した気持ちも少なからずわかるような気がしました。
私にはあのチェルシーのプレイは理解できません。
確かに選手サイドからみると、あれだけ頑張って守備に徹して、ジャッジの見落としとミラクルゴールで負けたことは悔しいかもしれません。しかし、もしあのままチェルシーに逃げ切られていたら、私の様なバルサのファンはどうにもならない後味の悪さとともにやはり怒りに燃えることになります。
また、あのヒディングの作戦のままチェルシーが勝ってしまっていたら、世界的なサッカー人気に影を落としかねないことにならないでしょうか?
つきなみですが、ファンを楽しませてこそのサッカーだと思いますので、今回のCLにおけるバイエルン(ゲルマン魂はどこに売っちゃったんでしょうか・・トルコかな?)やチェルシーの戦いぶりは私には感心できません。
実力に差があるならばまだしも、世界トッププレイヤーを集めたチームならば、あのようなゲームをして欲しくはないです。。
結局言いたいことは、チェルシーの選手も悔しいでしょうが、万一、あんな試合されて負けてしまったらバルサファンとしてはたまらんぞ!というだけのことなんですけどね(^^)