オシム語録 世界との距離

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「飛行機がもう少し早く飛ぶ時代になれば、南米とヨーロッパと日本が近づいてもっと発展できるのではないか」
オシムの記者会見 2005年6月11日
JリーグヤマザキナビスコカップCグループ第6節

昔、最初のワールドカップに出場するために、ヨーロッパのチームは船に乗って出かけていった・・・・・
いまや、シーズンオフには、ヨーロッパのチームがこぞって日本にくる時代になった・・・
ヨーロッパとの距離がもっともっと縮まっていけば・・・
ところで、オシム監督は、この日、ナビスコカップでFC東京をやっつけた。鮮やかな逆転勝利。
今年がオシムの日本での最後の采配の年になるかもしれない。
そのことを思うと、悲しくなる。
ピクシーが日本のサッカーフィールドから去ったときも、小さな絶望を味わった。オシムがいなくなることも、同じくらいか、それ以上に悲しい。
さて、その記者会見で、オシムは日本代表のワールドカップ出場について、コメントを求められた。
全文を引用する。

「正直に答えれば、しっかりとした結果のためのサッカーをした。その意味では素晴らしいプレーだった。それはすごい資質で、必要なことをやったわけだから。この2試合はとても大切な試合で、ものすごく賢くプレーしたと思う。
結果を出したわけだが、メンバーの構成をみれば、ガチガチに守るようなチームではない。有名で、経験のある選手、チームとしてボールを動かせる選手をグラウンドに立たせながら、確実な結果を出した。ものすごく賢くやったと思う。あとは、高原、久保のケガが治れば、さらにいいチームになるだろう。日本のサッカーがこれから発展していく大きな機会を得たと思う。
ポジティブに考えて、これからワールドカップまでの1年間、またその後の数年に対して、これから発展できるシチュエーションを得た。それは全員にとっていいことだよね。飛行機がもう少し早く飛ぶ時代になれば、南米とヨーロッパと日本が近づいてもっと発展できるのではないか。」

今回の日本代表のすばらしい結果を見ながら、それでも一抹の不安を感じるのは、ヨーロッパや南米の強豪と真剣勝負をするとき、一勝もできずにワールドカップを終えてしまうのではないか、と思うことだ。
ごく単純に考えて、アジアでぎりぎりの戦いをしているチームが、世界で結果を残せるのだろうか? と疑問に思い、不安に思う。
しかし、不安になっている同じ時間に、進歩をする時間は与えられている。
これからの一年間。日本が何をすべきか、と言えば、世界のトップレベルを経験し、その経験を基準に個人とチームを発展させる、ということだろう。
ジーコも、そういう趣旨のことを言っていた。

ここまでやってきて、チーム力が試合ごとに上がっている。世界とも対等に戦って、とてつもない偉業を達成できる資質を持ったグループだと思うので、それを確信して前に進んでいきたい。

中田もそう言っている。

何ということではなく、サッカーには限界はないわけで、すべてにおいて誰もが伸びることができると思う。

子供たちのサッカーを見ていても、最初に体験するすごいものには、こてんぱんにやられてしまう。
しかし、2回目の対戦で心構えができていれば、対応可能な範囲におさまってしまう。それが、一試合の間に起きることもある(ちょうど、ワールドユースで、日本のU-20世代が、オランダと対戦したときのように?)。
オシムが示唆したように、飛行機のスピードが早くなることで、ヨーロッパや南米との対戦が増えれば、日本の経験値は簡単にあげられるだろう。
2018年、実際に、そうなっているかもしれない。
しかし、オシムが言っている本質は、要するに、もっと機会と経験を作れば、日本は強い国になっていく、と、そういうことだろう。
そのことに、皆は気づいていて、その証拠に、ここ1-2年で、競合国との対戦は、急激に増えてきている。
今、ヨーロッパから来ているクラブには、お金儲けの印象がつきまとうが、日本にとっては、むしろ世界を体感するいい機会だと思う。バルセロナを目の前にして、ボールボーイをしている日本人のサッカー少年だっているだろう。世界を見ることは、少年たちにとって、悪いことは一つもない。
すべての年代を通じて、そういった経験を早めに積んでいくのは、すばらしいことだ。
中田の次の世代、その次の世代が、ワールドカップのフィールドに立つのは、それほど遠い話ではない。

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