デコのウマミとコク

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「本当に質の高いビッグクラブと対戦すると”賢さ”という小さなディテールで勝負が決まる」
デコのインタビュー
ナンバーPLUS 2006年2月 FCバルセロナのすべて

デコはバルセロナの中盤の選手で、地味なルックスをしている。プレイもルックスのように地味だから、テレビで流されるハイライトシーンに映る回数は少ない。
僕のような素人には、ちょっとわかりにくい選手だが、サッカーの玄人であるほどデコ好きが多い。
「魚は顔が悪いほどうまいんだ」みたいなことを、昔どこかの親父に言われた。デコを見るたびにそのことを思い出すが、デコの顔が悪いという意味ではなく、「華麗なプレイ」とは別のところに、本当の「ウマミとコク」がある、という感じがする。
デコのよさがわかると、大人扱いされるかも、などと不純な動機もまじりつつ、デコからサッカーの「ウマミとコク」を堪能しよう、とそう思っている。
バルサのライカールト監督はデコを決してはずさない。監督だけでなく、プジョルといったバルサの同僚たちも、ことあるごとにデコを褒める。
デコの本質は「勝負へのこだわり」だ。
しかし、デコは「鼻息の荒い熱血漢」キャラではない。冒頭の言葉にあるように、彼の勝負の本質は、ディテールを詰めるプレイにある。それも、”賢さ”というディテール。
デコの数字で面白いのはファール数だ。
チーム内で一番ファールを犯し、相手にファールを受ける回数も断トツに多い。一見不名誉な数値のように見えるが、そうではないようだ。
ファール数が多い、ということはそれだけ相手の攻撃を体を張って防いでいる、ということを示している。逆にファールを受ける回数が多いのは、相手から危険な選手と評価されている証拠でもある。
ファール数が多い一方で「デコはリズムを刻める選手」という評価もある。ファールがいっぱいあれば、チームのリズムは壊れそうなものだが、そうではない。
こんな数値にもデコの「賢さディテール」は隠れている。
ライカールト監督に限らず、デコは間違いなく世界でもっとも監督にほしがられている選手である。3人の名将は、デコを熱望し、その中心に据えてきた。
一人目は、モウリーニョ。モウリーニョはポルト(ポルトガル)の監督時代、デコをチームの中心に据えていた。モウリーニョはチェルシーに移る際、デコをチーム構想の中心においていたようだが、デコは世話になったモウリーニョを袖にしてバルセロナへの移籍を決めている。
一方、バルセロナのライカールト監督は、デコがバルサと契約をすると知って、狂喜したという。ライカールトはデコの重要性を誰よりも強く認識している。
3人目は、ブラジルを世界一に導き、ポルトガルをヨーロッパの準優勝に導いたフェリペ。ポルトガル代表の監督だ。デコはブラジル生まれだが、ポルトガル国籍を取得し、今はポルトガル代表としてプレイしている。代表監督のフェリペは、デコがポルトガル代表になることを熱望していてたという。
ところがデコはつい数年前まで、ほとんど無名の選手だった。不思議なことに、そのころは誰も彼を欲しがらなかったように見える。
ブラジルからポルトガルに移籍した際には、移籍直後にレンタルに出される、という邪険な扱いも受けている。サッカーではなくフットサル選手としてプレイしていた時代もあった。モウリーニョ以前の他の監督は、デコを「技術レベルは高いがフィジカルが不足した中途半端な選手」と思っていた。
彼が本格的に活躍するには、モウリーニョという勝負に執着する監督との出会いまで待つ必要があった。二人が出会ったとき「賢さディテール」が化学反応を起こした。モウリーニョと出会って以降、デコは勝負のレベルが高くなればなるほど、その力を発揮している。
モウリーニョの遺伝子を持って、バルサを勝利に導く男は、今度の欧州チャンピオンズ・リーグでどんなプレイをするのだろう。
ブラジルの遺伝子を持って、ポルトガル代表でプレイする男は、ワールドカップでどんな戦いをするのだろう。
今年のサッカーは、ロナウジーニョを中心に回っているように見えるが、実際にはデコの刻むリズムが、ずっと鳴り続けることになるかもしれない。
そして、デコの刻むリズム音は、この先もずっと長そうだ。
3人の優秀な監督に熱望され、彼らの遺伝子を受け継いだデコは、将来、間違いなく優秀な監督になるだろう。
まだ「選手のデコ」を味わい尽くしていないのに、気が早いけれど、デコのよさを知れば、この先、かなり長い間、その「ウマミとコク」が堪能できそうだ。

コメント

  1. フミ より:

    デコはポルトにいたあるシーズン、ポルトガルリーグでボール奪取回数が一番多い選手であったこともあますし、フリーランニングも多く精力的に攻守にわたって動きますよね。
    「ファンタジスタ」でありながら、過去のファンタジスタとよばれた選手の中で最も「守備で貢献できる」ので、大内さんがおっしゃるように「ウマミとコク」を感じさせてくれるんでしょうね。
    モウリーニョ、フェリペはトップ下、そしてライカールトはボランチでデコを使う。どちらでも彼は遜色ないプレーをしましたので監督のスタイルが見えますよね。
    守備的なのか攻撃的なのかが・・。(代表監督は仕方がない面もありますが)

  2. フミさん、ありがとうございます。
    なんかいろんな記事を、じっくり読んでもらっていて、うれしいです。
    >モウリーニョ、フェリペはトップ下、
    >そしてライカールトはボランチでデコを使う
    そういえばそうですね。監督によって使い方が微妙に違いますね。
    そいえば、ぜんぜん違いますが、デコ 髪形ぐっと変わりましたね (^^;)

  3. サッカー少年 より:

    僕は地元のサッカーチームでサッカーをしています。 
    デコのプレーが大好きです。彼のようなボール扱いができるように、日々練習にはげんでいます。 
    これからも、デコのプレーに期待しています。

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